親分もっとしっかりしてください。もうこうなったらタナゴでも釣るかと。

朝日新聞の「誤報」騒動に関連して、つり人社の鈴木康友さんが9.17付けの自身のコラム「朝日新聞よ!バス問題の大誤報も認めなさい!」で、「日本人を辱しめ、貶めた”反日”&”売国”報道の大罪は誤報の取り消しや謝罪ですまされるものではありません。」、「朝日新聞は、ブラックバス害魚論の誤報について速やかに認め、謝罪すべきです。」と書いている。

誰がどんな考えを持とうが自由だ。でもあなたが言ってることはまるで戦時中の特高みたいですね、言論人としてまずいんじゃないですかと、先日本欄で批判した

孫引きで申し訳ないですが、「週刊文春」(文藝春秋)9月25日号の池上彰氏の連載コラムを紹介している「本と雑誌のニュースサイト/リテラ」の記事を紹介する。太字引用者。

池上氏の批判は、このコラムが掲載されている「週刊文春」をはじめとする週刊誌にも向けられている。

一連の批判記事の中には本誌を筆頭に『売国』という文字まで登場しました。これには驚きました。『売国』とは日中戦争から太平洋戦争にかけて、政府の方針に批判的な人物に対して使われた言葉。問答無用の言論封殺の一環です。少なくとも言論報道機関の一員として、こんな用語を使わないようにするのが、せめてもの矜持ではないでしょうか

いかがだろうか。新聞社名を伏せるなど、池上サンらしい配慮とバランスを見せていることにはちょっと不満が残るが、おっしゃっていることはすべて正論。正直、この人がここまできちんとした言論の自由への意識、ジャーナリストとしての倫理観をもっているとは思っていなかった。こんな人物がポピュラリティをもってメディアで活躍できていることを素直に喜びたいと思う。

 だが、同時に暗澹とさせられるのが、この国のメディアでこうした意見をはっきりと口にしたのが、今のところ、池上サンただ1人しかいないという事実だ。新聞もテレビも雑誌もそんなことはおくびにもださず、安倍政権と世の中の空気に乗っかって朝日叩きに血道をあげているだけだ。

>「池上彰が朝日叩きに走る新聞、週刊誌を批判! 他紙での掲載拒否も告白!

わたしは池上彰さんという方を、ニュースを分かりやすく解説してくれる、よくテレビに出ているおじさんとしか思っていなかった。上記の太字に関してまるっと同意する。ご指摘の通りだと思う。よく言ってくれましたという感じ。

鈴木さんは、9.19付のコラムでさらに引き続いて「朝日新聞のブラックバス害魚論も徹底批判を!」というコラムを書いている。

本当は朝日新聞の「誤報」が批判に値するかどうかが問題なのだがそれはさておき、鈴木さんは、朝日の「ブラックバス害魚論」を目の色を変えてやり玉にあげ、こっちも「誤報」なんだから訂正・謝罪せよと主張している(だれに謝罪しろと言うんだろう)。

小社は、ブラックバス報道における朝日新聞の不勉強を一貫して批判してきた。しかし朝日新聞のブラックバス害魚論を誤報だと批判するのは、間違っていると考える。あれは朝日新聞の「見解」だからだ。

こっちの意見と違うことをエラそうに言われればそりゃ腹が立つが、「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利はあくまで守る」、くらいのことは言いたい。なかなか言えないものだけど。

多様な意見があるから社会はおもしろい。そう言いきるにはある程度の胆力が必要だ。心根がビビってるやつに限って、声の大きな側につきたがる。ジャイアンの後ろではやし立てるスネ夫みたいなものだ。次に自分がジャイアンの餌食になるとは思っていない。

今回の朝日の「誤報」について悪ノリし、〈反日&売国〉という表現を無批判に使って朝日新聞をバッシングするのは、言論人としての自殺行為である。特定秘密保護法の制定などで、意に沿わない言論を封殺したい方針を明確にしている権力側を利するだけだ。

こういう小さなことをきっかっけに、何かと権力者の意向にならえが続けば、結果、もの言えば背中が寒い、庶民が息のしづらい社会になっていく。そうなれば、自由で楽しい釣りどころじゃなくなる。

鈴木さんは釣りジャーナリスト協議会の会長だ。同時代の日本の釣りマスコミ人の中で大きな仕事をしてきた。「釣りキチ三平」にも実名で登場したくらいで、たいへん著名で影響力もある。

親分もっとしっかりしてください。

タナゴでも釣るかと。
もうこうなったらタナゴでも釣るかと。
魔魚狩り―ブラックバスはなぜ殺されるのか
魔魚狩り―ブラックバスはなぜ殺されるのか