このあいだ、いつもの川でオイカワ釣りをしていたら、若いお兄さんが土手の上から水辺に降りてきた。互いに会釈した。
お兄さんに聞かれた。「フライですか。何が釣れるんですか。」
「オイカワですよ。」とわたしは答えた。ちょうど魚がかかって、ほら釣れた、とお兄さんに見せようとしたら、手元でバレた。
「わー。僕も釣りするんです。バスとかウナギとか」
「ウナギ?」
ウナギ釣りって、なかなかだぞと思った。
「関西弁だけど、向こうの人?」
「いいえ、いまそういう役なんで。」
そこで映画を撮っているんです、と言っていた。たしかに土手の上には大きなロケ隊がいた。小休止だったようだ。
ここはちゃんと魚を釣ってみせねばなるまい。気合いを入れて釣って、お兄さんの目の前にオイカワをぶら下げた。お兄さんは、「わー、へー。」と感心していた。
魚が釣れたんで、「じゃあ、釣りがんばってください。」、「映画がんばってください。」と言って別れた。爽やかな好青年だ。
今朝の新聞に、そのお兄さんが出ていた。
磯村勇斗さんていうんだって。仮面ライダーでひよっこのヒデだった。撮ってた映画は「覆面系ノイズ」だったみたい。
爽やかなはずだ。
今をときめく。
わー。
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