発売前増刷決定! 近刊『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』編集日記15(長いです)

昨日は『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』のカバー初校の色校正のために、いつも小社の出版物を担当してくださっている印刷会社、東京印書館さんの工場へでかけた。

じつは釣り仲間でもあるプリンティングディレクター氏と、誰よりも印刷センスにあふれている魂の営業Oさんと、最前線で汗をかいてくれる現場ご担当の四人で、刷り上がった校正紙を前にしてああだろうこうだろうと言いあって、さらによいモノにしていった。信頼しあっている仲間といっしょに進めるこういう作業がとっても楽しい。初校もよかったんだけど、さらに200%アップ(小社比)でよくなった。

印書館さんを失礼してから、北朝霞の駅前にあった松屋の系列のトンカツ屋さんへ初めて入った。おいしいんだけど量が多い。人生のなかで、トンカツとかカツ丼をガシガシと腹へ詰め込んで満足する年代を、カツニアン(Katsunian=カツ時代)と呼ぶ。わたしのなかのカツニアンはとうに終わってしまっていることを、あらためて思い知らされた。

北朝霞から池袋へ移動。すでに予約をもらっている池袋サンスイさんへ、お礼を兼ねて営業に行った。『フライの雑誌』の記事にも協力してくださっているフライ担当の佐藤さんへあいさつして、『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』のカバー初校を取り出して見せた。「きれいでしょ」と言うと、「おお、期待できそうですね」とのお言葉。つい、受注金額を超えるお代金のマテリアルを買いこんでしまった。いいんだどうせ使うもん。

池袋からいつもの銀座へ移動、カバーの初校紙を振り回して「きれいでしょ」と自慢する。さらに横移動して知り合いの店をもう一軒訪問し、やはりカバーの初校紙を振り回して「きれいでしょ」と自慢した。いずれも「きれいだね」と言ってくれて満足。

昔から個人的にかなり好きなサンマルクカフェに入ったら、若いひとでけっこう混んでいた。チョコクロを食べたら、眠くなってしまった。そのままソファで昼間っから船をこぐ。公共の喫茶店で寝るようなおじさんを、わたしは若いころ軽蔑の目で見ていた。いまは自分がそれだ。だからどうした。

気分がいいので、適当な友人を呼び出して、高円寺あたりで呑もうと思った。ひょいとキャストしたところ、「おれそんなに暇じゃないんですけど。」と言いながら、ひとりライズしてくれた。この友人は、数百万部単位で発行されている誰もが知っている出版物に、20年間も連載を持っているような方である。わたしのほとんど唯一と言っていい、メジャーな出版業界の友人だ。でもなぜか釣り仲間のため、社会的な立場は抜きにして、対等につきあえるのはありがたい。『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』のカバー初校を振り回して自慢するには、ぴったりの相手である。

高円寺の駅前で待ち合わせしてペリカン時代さんに入った。カウンターに座らせてもらい、話もそこそこに、『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』のカバー初校を取り出して、「きれいでしょ。」と自慢した。すると友人は、「なんですかこの表紙は。」とつぶやいたまま、口をつぐんだ。

なんですかって何よ。

「まず、ロゴはいいです。タイトルもいい。しかしこの写真だと、ひと目でフライフィッシングって分からない」。いやいや、人物フライロッド持ってるし、フライリールついてるよ。「んなの、わかるわけねえだろ。」。

あなたのデザイン意図は、よくあるフライフィッシャーの自分勝手な期待値の範疇から、一歩も出ていないんですよ、と友人は呆れたように言った。一般の人は、フライフィッシングなんか知らないし、まして「海でフライフィッシング」なんてイメージはない。だから、このカバーを見て、海のフライフィッシング楽しそうだなあとは、思ってくれない。ということらしい。

言外に、(だからお前はダメなんだ、このオタクが。)というニュアンスが含まれている。

うう。社運かかってるんです。

「ですが。」と、友人は続けた。

近年、といってももう10数年以上、ルアーでは海がもりあがっています。対象魚も広がり、それぞれの対象魚に合わせたルアーメーカーや情報誌まで出てくるなど、百花繚乱です。爛熟気味と言ってもいいほど。その流れから、まさに今、海のフライフィッシングに視線が傾きかけている情況だと、自分はにらんでいます。だから、海のフライフィッシングを扱ったこの本は、間違いなく注目されます。フライの雑誌社は、時代の半歩先を進んでいます。

おお友人よ、じつは最近では見たことがないくらいの予約数をもらっているんです。友人の目がきらりと光った。「何部刷るの」。これくらいと思ってます。「あほですか。すぐ無くなる。海フライの本の1も2も売切れでしょうに。買えない本には意味がない。その10倍は印刷しなさい。ついては事前のPRはこんな風にしなさい。え、そんなこともやってないの、あほですか。」。あとは色んなことを教えてもらった。なるほど、メジャーリーガーの言うこと考えることは違う。10倍は無理だけど言われた通りにします。

というようなことで、ずいぶん長くなりましたが、おかげさまで近刊『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』は、発売前の増刷が決まりました。深夜に仕事場へ帰ってきたら、渋谷サンスイさんからの予約注文書が届いていました。『海フライの本3 海のフライフィッシング教書』にご期待ください。

カバーの初校紙と、ご予約特典の薄い本「マッチ・ザ・バッチ」。友人は、じつは楽しみなんですそれ、と言ってくれた
海フライの本3 海のフライフィッシング教書
海フライの本3 海のフライフィッシング教書
『海フライの本 はじめての海のフライフィッシング』 国内初の「海フライ」単行本(品切れ)
『海フライの本2 はじめての海フライタイイング&パターンBOOK』(品切れ) 完全電子版
フライの雑誌 113(2017-18冬春号): ワイド特集◎釣り人エッセイ〈次の一手〉|川野信之/黒石真宏/碓井昭司/本村雅宏/渋谷直人/平野貴士/坂田潤一/遠藤早都治/加藤るみ/田中祐介/山本智/中原一歩/山﨑晃司
○天国の羽舟さんに|島崎憲司郎
○〈SHIMAZAKI FLIES〉シマザキフライズ・プロジェクトの現在
『フライの雑誌』第113号
本体1,700円+税〈2017年11月30日発行〉
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