オイカワとアイカザイムと日本のフライフィッシング史

毎日こんな小さな魚を釣って、よく飽きないっていうか、まあ、飽きない。

川と魚の状況が毎日違うことには、毎日川へ立ってないと気づかない。そしていったん気づいてしまうと、さらに毎日川へ立ちたくなる。

おふう。

アイカザイムを「フランスの伝統的な毛バリ」「デュボーにあります」と評した記述をさいきんの単行本で読んだ。長年お世話になっている尊敬する大先達の言葉ではあるが僭越ながらこれには異議を唱えたい。アイカザイムはダイレクト・ハックリングという島崎憲司郎さんオリジナルのタイイング手法を駆使しているところが最大の特徴で、『フライの雑誌』第10号(1989)初出。『フライの雑誌』第109号特集◎カモ尻大全および第111号特集◎隣人のシマザキフライズでも、多くの釣り人がシマザキフライズの代表作のひとつとしてアイカザイムをとりあげている。

デュボー(Devaux)はフランスのフライメーカーだ。山と渓谷社のビデオその他で「デボー」と表記されているが、本来のフランス語発音では「ドゥヴォー」ですよと、CDCを日本へ紹介してアメリカへと広げたそもそもの張本人であるスイス在住の音楽家・宮﨑泰二郎さんが、『フライの雑誌』第109号特集への寄稿で述懐している。1985年の「FFJ」で自分がうっかりドイツ語風に「デボー」と書いてしまったのがいまだに流布しているのは〝痛恨の極み〟であるとのこと。当事者が内情をガンガン書いている第109号の特集は相当オススメです。

誤解されがちなCDCの歴史をまとめた第109号の編集部記事〈なんで今さらCDC?〉をネット上で全文公開している。細かいことを、と思われるかもしれないが後世へできるだけ正確な情報を伝え残すのが、こんな時代のマニアな紙媒体の使命だと考えています。

月刊つり人5月号の記事「姉妹誌『Fly Fisher』30年の変遷に見る日本のフライフィッシングシーン」を読んだ。『日本のフライフィッシング史』発刊に呼応しているのだろう。記事中で『フライの雑誌』は先行雑誌であり、〈コマーシャリズムとは一線を画した同人誌の匂いも感じさせる専門誌〉と紹介してくれている。ありがとうございます。

ただわたしは何の因果か、たまたま妙な立場でこの30年間、日本のフライ業界のウラとオモテをずっと観察してきている。だからわたしにはここに書いてある30年は、〈つり人社とティムコにとって都合のいい30年〉に見える。つり人社とティムコの我田引水ヒストリー。本当はそうじゃなかったですよね、トラウト・フォーラムのことをまともに書けないのはなんでですか、と肩をポンとたたいてあげたい。

また、日本のフライフィッシング30年の歴史を語るのに、1998年創刊の地球丸「フライロッダーズ」誌が果たしてきた役割を論じないのは、いくら何でも不誠実だろう。つり人社にとって、後発で調子よくやっている地球丸はさぞ憎たらしい存在だろうけれども、書きたくないことは書かないのでは、歴史修正主義につながりかねない。大きなお世話でしょうがもったいない。

さらに前、1950年代から70年代、もっとも狂っていてもっとも面白かった勃興期の日本のフライフィッシングシーンは、『フライの雑誌』第61号、および第69号の特集でまとめています。

> 【特別公開】日本フライフィッシングの軌跡2
万博とカーターさんの頃(フライの雑誌-第69号)

> PDFファイルでも公開中

ところで、フライロッダーズさんの最新号は、うちの新刊「海フライの本3」を大きく紹介してくれたのに、つり人社のフライフィッシャーさんは最新号でなにも紹介してくれていなかった。とても哀しいです。どうしても地球丸さんへシンパシーを感じてしまうのは人情です。今までは真ん中にいたつもりだけど、これからはロッダーズ派になろうかしら、と思っています。フライフィッシャーさんの次号に期待です。紹介してくださいね。

今日のポイントはこんな感じ。水面の釣り。瀬もいちおう探ってみたが魚影は少なかった。やっぱり群れが上流へ(といってもほんの数十メートル)移動したのだろう。
ストレッチ式アイカザイムの壊れたヤツ。こんなのでもキャスト次第でちゃんと釣れる。
どうでもいい人間の事情には関係なく、マッチしたフライをきちんとキャストすれば、ちゃんと食ってくれるのがオイカワです。
[フライの雑誌-直送便] 最新号が出るごとに直送します。次号第114号は6月に発行します 
『フライの雑誌』第 109号: 大特集◎カモ尻(CDC)大全 CDC来日30周年記念|知られざる真実と日米欧の最新事情、よく釣れるフライパターン/新連載「魚の性格」近藤雅之/豪華連載陣/シマザキフライズ with CDC 2016 島崎憲司郎 CDC新時代への扉をノックする。
『フライの雑誌』第 109号: 大特集◎カモ尻(CDC)大全 CDC来日30周年記念|知られざる真実と日米欧の最新事情、よく釣れるフライパターン/新連載「魚の性格」近藤雅之/シマザキフライズ with CDC 2016 島崎憲司郎 CDCシナモン・アント2016/M&Cバリアント2016/スパース・アイカザイム2016/マシュマロ メガクリケット2016/CDCパラシュート2016/マシュマロ バザー 2016/アイカザイム2016 Marshmallow Mega Criket 2016/Marshmallow Buzzer 2016/IKAZAYIM 2016 CDC新時代への扉をノックする。
フライの雑誌 113(2017-18冬春号): ワイド特集◎釣り人エッセイ〈次の一手〉|天国の羽舟さんに|島崎憲司郎
○〈SHIMAZAKI FLIES〉シマザキフライズ・プロジェクトの現在AMAZON
フライの雑誌-第112号 オイカワ/カワムツのフライフィッシング(2)
フライの雑誌社の単行本新刊「海フライの本3 海のフライフィッシング教書」