毎年5月末ごろ、滋賀県の琵琶湖で育ったアユの稚魚を購入して放流。大きく育った7月上旬に解禁し、釣り客から遊漁料を集めてきた。しかし、釣り客が減り、ここ数年は毎年、100万円近い赤字。
高いお金を払って購入した琵琶湖のアユを、わざわざトラックで運んできて、放流して釣らせる。そんな漁協経営で「守られる」川が健全でしょうか。アユ釣り以外の多くの釣り人にとって魅力的でしょうか。そこに突っ込まなければ、漁協の苦境を訴える記事の意味がないでしょう。
漁協経営悪化の根元はアユ偏重にあるかもしれない。アユの放流事業の採算性の低さを指摘した水産研究が発表されています。〈内水面漁協におけるアユと渓流魚の放流事業の採算性〉(中村智幸2018)
鈴鹿川や支流の加太川で釣り客が並ぶ景色はもう見られない。
漁協解散は川魚釣りの機会を奪う
県の内水面漁場管理委員会を傍聴すればわかりますが、河川工事の補償で保っている(補償の収入を期待している)漁協は多いのです。内水面漁協が瀕死なのはずっと以前からの構造的な問題です。経済と行政と誤解に基づくセンチメントを混同しているようです。
漁協が解散しても川魚釣りの機会は奪われません。そもそも解禁日に放流魚目当ての釣り客がずらりと並んでいる光景の方がおかしいのです。
三重大大学院生物資源学研究科の淀太我准教授(魚類増殖学)は「河川管理者が、内水面漁協ほど全域的に、個々の河川の自然保護に取り組むことは難しい」と指摘する。
湖産アユや養殖魚を放流する内水面漁協が「個々の河川の自然保護に取り組」んでいるとも読めます。そこは生物多様性的に問題があると主張しないと、ふだんのご活動と整合性がとれないのではないでしょうか。
今回の記事は三重県内が中心ですが、おそらく全国で同じ問題が起こっていると思います。川釣りができなくなる恐れもあり、
「川釣りができなくなる恐れもあり」ってすごい雑なまとめです。
内水面漁業制度みたいなややこしいテーマを短信で紹介するには、媒体側の十分な理解と咀嚼が必要。分からないなら、あやしいなら、書かない、載せない。その自己判断の厳しさが信頼度につながります。今どき社会の木鐸でもないにしても。
つい先日の内外出版社さんの〈日本でも釣りのライセンスが必要! 釣り場や環境のために絶対に知っておきたい2つのこと〉も雑でした。釣り出版社による発信だったことでよけいにがっかりしました。
日本の内水面漁協と釣り、漁業制度の現在について考えをまとめておいてよかった。自分はこう考えています、と手前みそを紹介することができます。
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