フライの雑誌-第122号(2021)から、〈特集はじめてのフライフィッシング|フライフィッシングの起源〉を公開します。
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フライフィッシングの起源について
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フライフィッシングの出自について整理します。
よく、「起源はイギリスの貴族で」などと言われます。先日編集部に取材してきたテレビ番組の人もそう言っていました。
高貴な香りが漂ってきそうですが、本当でしょうか。
鳥の羽を使った疑似餌釣りということなら、サギの仲間は、羽根を水面に落として寄ってきた魚を獲る行動が知られています。時には脚で波紋を作っておびき寄せるそうですから、手だれ(脚だれ?)です。
サギが英国貴族の毛バリ釣りを見て真似したとは考えられないので、起源ならサギのほうが先でしょう。
文献に残っている範囲では、紀元前200年頃、古代ローマ人が現在のギリシャあたりで赤いウールに鶏の羽を巻いたハリで魚釣りをした記録があります。
島崎憲司郎さんに教えてもらったことでは、16世紀のドイツ農民戦争の頃に、領主が〝羽根と糸の釣り〟を平民に許可した意の文書が残っているそうです(『中世の風景(上)』中公新書)。
英国貴族とドイツの農民ではえらい違いです。ちなみに有名な『釣魚大全』の初版は1653年、日本では江戸の初期です。
日本国内では、文献はないもののおそらくは江戸の前から山あいの漁師のあいだで、渓流魚を対象とした毛バリ釣りは行われていたと推測されています。楽しいことは、同時発生的に生まれるのではないでしょうか。
現在私たちが楽しんでいる近代フライフィッシングは、英国から米国へ渡って1920年代に合理主義の洗礼を受け、さらに30年代に入って米国でナイロン製フライラインが登場してから、急速な発展をみたと考えていいでしょう。
サギの話に戻ると、疑似餌の釣りは駄洒落ではないですが、魚を詐欺に遭わせるみたいなものです。でも魚はフライを偽物だと思って食べるわけではないですから、どちらかというと幸せな結婚詐欺みたいなものと、胸を張りましょう。
胸を張ることもないですね。しょせん楽しい遊びです。遊びだから、つい人生を賭けてしまいたくなります。
ちなみにインターネット上のフィッシング詐欺の「フィッシング」と、「釣り」はまったく関係がありません。
『フライの雑誌』次号第124号は、2022年2月発売で頑張ります。色々あったからよけいに待ちに待った春、ココロもカラダも自由な「春の号」です。ご協力をよろしくお願いします!
『フライの雑誌』第123号
定価1,870円(税込み) 本体1,700円+税
(2021年10月15日発行)
ISBN 978-4-939003-87-5
釣れるスウィング
Simple&Refreshing FlyFishing with a SWING
シンプル&爽快 サーモンから渓流、オイカワまで
アリ・ハート氏の仕事 Ari ‘t Hart 1391-2021
フライフィッシング・ウルトラクイズ!
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