【公開記事】
その後の〈釣り場時評〉
各地の最新情報を報告します。
水口憲哉
(東京海洋大学名誉教授・資源維持研究所主宰)
フライの雑誌-第123号(2021年発行)掲載
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本誌第120号の「釣り場時評93 磯物激減とコロナ禍」の、1年後の状況をまず報告する。
今年2月の水産庁主催、磯根資源・藻場研究会のメール会議で水産研究所の黒木ほか1都4県の水産試験場研究者ら11名によって〝「バテイラ」広範囲での急激な減少の実態──原因不明の消滅ミステリー〟として報告された。
9月現在の聞き取りでは、伊豆白浜の潜水調査によるとちらっと見える程度であり、利島では減ったまま禁漁であるが、イセエビやサザエも減り出したと新たな大きい心配が起こっている。
それと殆ど同時に調査を始めた「クルマエビと農薬」はほぼ予想通りの調査結果が出たが、殺虫剤の宿命で害虫での抵抗性発生や価格競争もからんで、フィプロニル含有のプリンス粒剤を田植え時の箱処理剤として使用しない県が昨年から現れだした。
TBTでのバイガイと同じように2、3年したらクルマエビが大発生して回復する県が次々と出てくるかもしれない。もう少し様子を見てから公表する。
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コロナ禍については、筆者の暮らす千葉県いすみ市を始め外房の5市2町等過疎の地域は死者ゼロであると安心していたが、いすみ市では感染者が急増し不安な日々をおくっている。オリンピックのせいである。
8月20日の毎日新聞は〝千葉・いすみ市長「五輪で感染拡大」隣町でサーフィン競技開催〟という見出しで、
〝市によると、7月下旬以降に一宮町の競技会場に隣接する同市の太東海岸で感染者が出始めた。競技は無観客だったが、会場が見渡せる同海岸に地域外から大勢の人たちが集まり、周辺の飲食店などもにぎわったという。この地域に感染者が集中していたことから、市は8月1日から毎週日曜に同地域で抗原検査を実施して感染者のあぶり出しを始めた。同海岸の駐車場も閉鎖している。〟
「この地域」というのは、いすみ市北東部の国道128号線の沿線地域のことであり、筆者もそこに住んでいる。よく行く近くのスーパーではレジ係を始め従業員4人が感染したという話も伝わってくる。一日おきぐらいに行っていたのを週一にした。唯一の情報は、新聞のちば面に出る市町村別感染者数である。
今年に入ってから7月29日までの一日当り感染者数は0.4(人)だったのが、8月に入ってからのいすみ市の(10日ごとの)一日当り平均感染者数は、3.5、5.9、7.0、3.0、1.0と減ってきて、9月20日までの5日間は0である。
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元気の出る話を。本誌第121号の「釣り場時評94 メガソーラー(MS)の次は巨大洋上風車群」で扱った自然エネルギー発電所建設計画の現状について。
長野県諏訪市四賀のMS建設計画では諏訪、茅野両市長はまともだったが、静岡県伊東市、千葉県鴨川市、岩手県大船渡市では市長が問題ありだったものの、市民の努力により、これら4つのMS計画は全て中止となっている。
ことに大船渡市の件では、8月25日発行の「仙台経済界」に〝太陽光発電所建設巡り、住民ら戸田市長、志田副市長を刑事告発〟と取り上げられ、実際、3月24日には〝虚偽有印公文書作成、同行使〟の疑いの告発を岩手県警が受理している。
また山口県下関市安岡の共同漁業権漁場内の洋上風力発電所建設計画も、前田建設工業が断念したと、市民の会の問い合わせで明らかになった。
最後に、まっとうな町長の発言を。広島県安芸太田町の橋本町長が広報8月号で〝風力発電計画は受け入れない〟と明言。
その理由は、「建設工事の受注や固定資産税等メリットを受ける人々というのは割と広く町全体に及ぶと思われるのに対し、健康被害や土砂災害等デメリットを受ける可能性のある皆さんは計画予定地周辺に偏っています。」、「本計画は、住民の安全のみならず安心も脅かされる恐れがありました。」、「判断にあたって特に私が配慮した事は、本件は多数決で決めるべき案件ではないということでした。」。
(了)
編注: 本稿掲載後、岩手県大船渡市のメガソーラー計画は、事業者と行政側の画策により復活しました。くわしい事情をフライの雑誌-第125号に掲載します。
フライの雑誌-第123号掲載
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