【公開記事】TOPICS|編集部まとめ 釣り人に関係あるかもしれないトピックス|フライの雑誌-第111号掲載 2017年3月31日発行

『フライの雑誌』第111号(売り切れ|2017年3月31日発行)から、「釣り人に関係あるかもしれないトピックス 」(P.128-P.129)を公開します。

『山と河が僕の仕事場』①と②と|根津甚八さんと河口湖の釣り|新刊『ある毛鉤釣り師の足跡』|キングサーモンとニジマスの子は|「産業管理外来種に関する意見交換会」開催|外来種と大政翼賛報道|水産庁は誰の味方か|三陸の釣り大会へ復興庁が参画|「福島の魚、基準値超えゼロ」は誤報

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●『山と河が僕の仕事場』①と②と

話題の一冊、『山と河が僕の仕事場|頼りない職業猟師+西洋毛鉤釣り職人ができるまでとこれから』が品切れになりそうだったので、増刷しました。小社の本では中村智幸さんの『イワナをもっと増やしたい!』以来の重版です。ありがとうございます。

魂の書籍取次会社、地方小出版流通センターさんの歴史ある「アクセス」紙(第481号)のトップ記事を、牧浩之さんが書きました。『山と河が僕の仕事場②』の発売に合わせて、大プッシュをいただきました。新刊『山と河が僕の仕事場②』は遅れに遅れましたが、ついに2/28に発行できました。おかげさまで初版の半分をすでに出荷しました。Amazonのランキング[総合4桁台]をキープしているので編集部は踊りを踊っています。面白い本です。おすすめ。

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●根津甚八さんと河口湖の釣り

NHK日本釣り紀行の収録で、根津甚八さんが河口湖へフライフィッシングにやって来たのは約20年前だ。ニジマスの漁業権を取得した河口湖漁協が、全国的に大注目されていた。番組には小誌の中沢孝編集長がガイド役で一緒に出演した。根津さんは湖のフライフィッシングはほとんど初めてだった。

当時のテレビ撮影はフィルムだ。職務に忠実な撮影スタッフは、根津さんが釣る瞬間をどうしても撮りたかった。釣っている間、ずっとカメラを回しっぱなし。通常は1日で終わる撮影を延長して、2日目に突入。手持ちのフィルムを使い果たした。それでも釣れない。

結局根津さんは2日間丸ボウズだった。かけてもバラしてばかり。長い人生そういうこともある。根津さんは釣りは好きだけどうまくなかった。中沢氏に聞いたところによると、撮影翌週の河口湖には、一人でウエーディングしてフライキャスティングを繰り返している、根津甚八の姿があったとのこと。何匹か釣りました、と報告があったらしい。

根津さんは『フライの雑誌』へ何回も寄稿してくださった。出身地である山梨県都留市を流れる桂川をきれいにする運動には、多忙の中を熱心に関わられていた。2016年12/29、根津甚八さんがご病気のため亡くなられた。天国の川でもよい釣りをしてください。

『フライの雑誌』第26号(1994)

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●新刊『ある毛鉤釣り師の足跡』

フライフィッシング史に残る大著『フライフィッシング用語辞典』の著者、川野信之さんが最新刊『ある毛鉤釣り師の足跡』(カワノ・ブックス/水公社)を上梓した。ご本人が語られているように、「一人の男の人生のほぼすべてが綴られている」味わいぶかい一冊。

川野さんの『フライフィッシング用語辞典』、『フライフィッシャーの昆虫学』、『水に浮くフライとその作成法』、『フライに対する鱒の行動』、そして本書『ある毛鉤釣り師の足跡』は徹頭徹尾、川野氏個人の視線と情熱に貫かれている。

166ページ・オールカラー。川野信之さんは残念なことに2018年4月にご逝去されました。トラウト・フォーラムの活動、あちこちの川、多摩川のマルタウグイ、蓼科の池などでご一緒させていただきました。川野さんは釣り師でした。(堀内)

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●キングサーモンとニジマスの子は

1/27、山梨県知事が会見。「キングサーモンと育てやすいニジマスの掛け合わせに日本で初めて成功し、この魚が養殖魚として適合する旨の通知を水産庁からいただきました。」。3年で体長70センチ、重さ3キロに成長する。忍野の水産技術センターで開発。名前を公募中。

「自然界に存在しない魚のため養殖するのは生殖能力のないメスのみで、同庁が繁殖しないことを確認した」(日経1/27) 

自分の都合に合わせて自然を改変してきたのが人類の歴史だ。だからこそ現代のように人類は繁栄した。偉ぶらず、ほどほどに慎ましく生きていきましょう。名づけレースは「ニジマス+マスノスケ」で、現状では「ニジノスケ」が一歩有利か。「ニジモン」もいいが、それじゃポケモンみたいだとの声も。

山梨県のウェブサイトから

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●水産庁「産業管理外来種に関する意見交換会」開催

2/27、八丁堀の日本フィッシング会館にて、水産庁釣人専門官の声がけによる「産業管理外来種に関する意見交換会」が開かれた。参加者は釣り媒体、釣り人団体、業界関係者など。

ふだん水産庁担当者と顔を合わせている「釣りジャーナリスト協議会」会員以外の釣り媒体関係者へも、水産庁からアナウンスをした。実際に会員外の釣り媒体からも参加社があったのは、すばらしいことだ。

3時間にわたり、活発な論議が行われた。水産庁主導の外来種テーマでのオープンな勉強会、意見交換会は今まで一切なかった。今後水産庁の広報活動の一環として連続的に開催されることが大いに期待されている。

産業管理外来種については本誌第107号「産業管理外来種とは何じゃらほい 国策で増養殖が奨励されてきた外来種、ニジマス」(水口憲哉)を参照ください。フライの雑誌ウェブサイトで特別公開中です。

水産庁主催意見交換会

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●外来種と大政翼賛報道

特定外来生物法に関連し、環境省・農林水産省・国土交通省が連名で作成した「外来種被害防止行動計画」には、国民が遵守するべきものとして、「外来種による被害を防止するための考え方と指針」を示してある。その74ページ。

>メディア等関係者【現状分析】
外来生物法施行時には新聞やテレビ放送において外来種問題が頻繁に取り上げられ、社会的な関心が高まりました。一方で、その侵略性が正しく認識されていないために、野外に定着している侵略的な外来種を肯定的に取り上げる報道、出版も見受けられます。

この記述には大いに問題がある。

国が言う「外来種を肯定的に取り上げる報道、出版」とは具体的になんなのか。「見受けられます」、だからなんだ。報道、出版関係者は国の考えを忖度しろと言うなら、言論の自由へ国が手を突っ込んでるのと同じだ。こと外来種の話になると、ニッポンは大政翼賛がまかり通る。2/28の「産業管理外来種に関する意見交換会」で水産庁に真意を質した。ところが水産庁にはこの記述が問題である認識がなかった。

当日集まっていた釣り雑誌や新聞のデスクたちの中で、本件について発言したのはフライの雑誌社だけだった。そして誰も反応しなかった。国が報道を抑制し、表現の自由をおびやかそうという大問題なのに、当の本人たちが無反応。言うべきこと、言いたいことを言わない媒体に存在意味はない。お国には逆らいませんということなのだろうか。

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●水産庁は誰の味方か

水産庁の公式フェイスブックページは、水産業、魚食の楽しみ、漁業についてなど、わりとゆるめの話題を提供している。時代は変わった感がある。

2017年2/28、水産庁は、中禅寺湖の放射能汚染によるヒメマスの漁業被害についてこう書いた。(概要)

>【中禅寺湖のヒメマス、まもなく解禁予定です。】
ヒメマスはサケ科の魚ですが、一生を湖で過ごす淡水魚で臭味がなく美味です。ここ数年の間、栃木県の中禅寺湖では、ヒメマスの解禁延期要請が出ていて食べることができませんでした。
しかし、昨年10月に、解禁延期要請が解除されたため、今年の釣りシーズンからは、持ち帰って食べることができるようになるそうです。
解禁延期要請解除までの栃木県と地元漁協の御苦労と検査への御尽力には、つくづく頭が下がります。
ヒメマス以外のマス類(ブラウントラウト、ニジマス等)は、今年のシーズンもキャッチ&リリースだそうです。これらの魚は、食べられない代わり大物がヒットしそうですね。

水産庁の他人事っぷりにがく然とする。以下、疑問点を列記する。

1、水産庁は漁業被害を引き起こした国の原子力政策の失敗を漁業関係者へ謝罪しましたか。
2、放射能汚染で困窮している観光業者を含む中禅寺湖の漁業関係者へ、水産庁は具体的なケアをしましたか。
3、放射能汚染による漁業被害を今後二度と起こさないために、水産庁としてどんな策をとっていますか。
4、原子力発電所の再稼働の是非は国民的議論になっています。日本の漁業を毀損した放射能汚染を引き起こした原子力発電所を、水産庁は将来的にどうするべきだと考えていますか。
5、今回のエントリーは漁業者を守るのが使命である水産庁の公式意見として妥当だと考えていますか。

役人が頭を下げたところで、なんの意味も価値もない。放射能汚染による漁業被害に関する責任を頰被りする、水産庁の姿勢を許してはいけない。

水産庁は誰の味方なのか。

水産庁Facebook 2017年2月28日付

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●三陸の釣り大会へ復興庁が参画

 3/3、水産庁.釣人専門官から、釣り人への情報提供があった。三陸沿岸の四つの釣り大会を、復興庁が後援する。被災地域での復興を加速化させるための取り組みの一環とのこと。

「三陸沿岸においては、国民的なレジャーである釣りが地域資源の一つであり、震災後、海中のがれきの撤去などを進めた結果、釣り大会が開催されるまで回復してきたところです」(復興庁)

今後「復興目的の釣り大会」が水産庁の旗ふりで行なわるならば、釣り人との関係性は画期的に改善するはずだ。

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●「福島の魚、基準値超えゼロ」は誤報

3/8朝日新聞の一面見出しに、「福島の魚、基準値超えはゼロ」と大きく出た。「東日本大震災にともなう福島県沿岸の魚介類の放射性物質検査で、国の基準値超えは昨年ゼロに。」と書かれているが、これは明らかな誤報だ。

なぜなら淡水魚には基準値超えが出ている。阿武隈川漁協を始めとした福島県内のきわめて広範囲で、今なお採捕と出荷制限が続いている。内水面の魚は福島の魚ではないのか。大変なミスリードだ。

放射能汚染が消えず、採捕制限のかかったままの漁協と遊漁者は、地元の川と湖で釣りができなくて、たいへん苦しんでいる。何百年も続いてきた川漁文化が、原発事故のせいで途絶えようとしている。なぜそこを見ないのか。

間違いを見ないようにしていると、人間はまた同じ間違いを起こす。

(以上)

第111号(128−129)

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フライの雑誌-第111号(2017) 売り切れ

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解説 荻原魚雷

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目の前にシカの鼻息(樋口明雄著)
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