i師匠のフライと11.27(日)〈巻き場フライデー〉拡大版

上州屋八王子店さんが毎週金曜夜に主催している〈巻き場フライデー〉。お客さんが各自道具とマテリアルを持ち込んで、足りない材料はその場で購入して、お店が用意したでかいテーブルで、自由にフライタイングを楽しめますよ、という好企画です。もう10年近く続いているのかな。

ここで知り合った同士が、ここで巻いたフライを持って、急きょ「じゃあ明日一緒に釣りに行こうよ。」という話になることも多いとか。フライフィッシングを通じて、貴重な釣り仲間、人生の友人の輪が広がります。まさにリアル店舗ならではの楽しさです。

こういう企画ではバックアップするお店の側の、ホストする態勢が大切です。集まってくる様々なキャリアと背景とクセをもつお客さんたちを、平等に歓待しなければいけません。ですがなかには勘違いしてるというか、痛いお客さんもいます。たとえば実力もないのに初心者さんへ威張りたがる(そして自分はほとんどモノを買わない)、牢名主希望みたいな困ったベテランさんとかですね。

人類史が始まってから現在までずっと、全世界のフライショップがその手のお客様への対応に苦慮してきました。上手にさばかないと、あっという間に場が乱れます。結果として全てのお客様が逃げ、残るは牢名主だけという悲惨な結果になります。釣りじゃない他の目的を持って近づいてくる人もいますね。

そのあたり、〈巻き場フライデー〉を運営している上州屋八王子店店員Mさんの手腕は見事です。さながら銀座の高級クラブの名物ママのように、気配り・目配りで空気を軽やかにコントロールします。

もっとも、とはいえ、さすがに通常業務もあるので、Mさんの手だけではお店の中は回りません。そこで登場するのが、Mさんの盟友にして釣り仲間の井上さん(iさん)です。別名、みんなの師匠。なぜそう呼ばれるようになったかのドキュメントはこちら

i師匠の知識と経験と技術と、誰からも愛されるお人柄は、余人をもってかえがたいものがあります。フィッシングでもタイイングでも、文字通り〈巻き場フライデー〉のみんなの師匠です。i師匠が自分から出しゃばることは一切ありません。

びっくりする人も多いようですが、i師匠は本当はお店のお客様です。ただなぜか中の人並みに商品のラインナップと最新在庫を把握しています。数年前、Mさんが急病で勤務をお休みされたことがあります(その時のご様子は、名文家でもあるMさんが『フライの雑誌』第113号「20パーセントからの生還 パニック・ライズ21」に書いてくれています)。

あの時は、困り果てたティムコ社の営業さんがi師匠に相談しました。すると井上さんが営業さんを連れて店内をまわりながら、フライ用品の欠品を的確に指示してあげたという、部外者の人にはちょっとよくわからない、美しい光景が展開されたのでした。

じつは〈巻き場フライデー〉の企画も、もともとはMさんがi師匠に相談して実現したものです。そして、ここは大事なところですが、先述した牢名主希望みたいなお客様は、この楽しい〈巻き場フライデー〉へ寄りつけません。取り憑こうと思っても、皆さんに乞われたi師匠がニコニコ笑って巻き場の机に座り、親切ていねいに超絶テクでフライを巻いていると、すごすごと退散せざるを得ないんですね。もしくは、逆にi師匠のファンになってしまいます。

昨夜、本誌編集部ホリウチは、〈巻き場フライデー〉へお邪魔してきました。そこでたまたまi師匠のフライボックスを見せてもらいました。i師匠が20年ほど前、加賀の地元名人へ毎週のように挑んでいた頃のフライだそうです。マテリアルの長さ、質、ワイヤーの長さを統一させた上で、各カラーによる魚の反応の差異を観察したとのこと。どうですか、この息をのむ見事さ。

「この頃は引っ張りメインだったからね。今ならまた違うアプローチもあるんだけど。」

おだやかに微笑むi師匠。やっぱりすげえ。実物を見たい方は、上州屋八王子店の〈巻き場フライデー〉へどうぞ。

どーん。「ボックスに入れておくフライは同じ種類を最低4本。その理由は」、i師匠に聞いてみてください。

フライデーの拡大版。「超拡大版・シマザキフライ タイイングフルデモンストレーション」。要望の多かった日曜の開催が決定しました。弊誌の次号特集「隣人のシマザキフライズ2」の発行に合わせて企画してくださいました。ありがたいし、とっても楽しみです。ただ問題は、次号が間に合うかってことです。がんばります。

単行本新刊
文壇に異色の新星!
「そのとんでもない才筆をすこしでも多くの人に知ってほしい。打ちのめされてほしい。」(荻原魚雷)
『黄色いやづ 真柄慎一短編集』
真柄慎一 =著

装画 いましろたかし
解説 荻原魚雷

フライの雑誌-第122号|はじめてのフライフィッシング みんな最初は初心者です。オススメいたします。

フライの雑誌 125(2022夏秋号)
> くわしい内容はこちら
Flyfishing with kids.
一緒に楽しむためのコツとお約束

子供と大人が一緒にフライフィッシングを楽しむためのコツとお約束を、子供と大人で一緒に考えました。お互いが幸せになれるように、子供が子供でいられる時間は本当に短いから。
子供からの声(10〜12歳)|大人からの声|水産庁からの声|子供と遊ぶための道具と技術と心がまえ|釣り人の家族計画|イギリスの場合|「子供釣り場」の魅力と政策性
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そして〈シマザキフライズ〉へ
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 『フライの雑誌』の新しい号が出るごとにお手元へ直送します。差し込みの読者ハガキ(料金受け取り人払い)、お電話(042-843-0667)、ファクス(042-843-0668)、インターネットで受け付けます。

ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線」(山﨑晃司著) ※ムーン・ベアとはツキノワグマのこと

喧嘩上等  葛西善蔵と釣りがしたい

特集◎釣れるスウィング
シンプル&爽快 サーモンから渓流、オイカワまで|アリ・ハート氏の仕事 Ari ‘t Hart 1391-2021|フライフィッシング・ウルトラクイズ!
『フライの雑誌』第123号
2021年10月15日発行
ISBN978-4-939003-87-5

身近で楽しい! オイカワ/カワムツのフライフィッシング ハンドブック 増補第二版(フライの雑誌・編集部編)

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フライの雑誌-第122号|特集◉はじめてのフライフィッシング1 First Fly Fishing 〈フライの雑誌〉式フライフィッシング入門。楽しい底なし沼のほとりへご案内します|初公開 ホットワックス・マイナーテクニック Hot Wax Minor Technics 島崎憲司郎+山田二郎 表紙:斉藤ユキオ

島崎憲司郎さんの『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW』は各所で絶賛されてきた超ロングセラーの古典です。このところ突出して出荷数が伸びています。

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特集◉3、4、5月は春祭り 北海道から沖縄まで、毎年楽しみな春の釣りと、その時使うフライ ずっと春だったらいいのに!|『イワナをもっと増やしたい!』から15年 中村智幸さんインタビュー|島崎憲司郎さんのスタジオから|3、4、5月に欠かせない釣りと、その時使うフライパターン一挙掲載!
フライの雑誌』第124号

桜鱒の棲む川―サクラマスよ、故郷の川をのぼれ! (水口憲哉2010)

目の前にシカの鼻息(樋口明雄著)
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