この時期になると、多摩川のマルタウグイが気になる。
多摩川の野生マルタウグイの存在は、『フライの雑誌』第54号(2001)の中本賢さんの連載記事で、初めて世の中へ紹介された。第61号掲載(2003)「フレッシュ・マルタを狙え!」(公開中)では、その時点でのフライフィッシングによるマルタ釣りの知見を全部書いた。
2003年から2005年にかけての3年間、わたしは京王多摩川のほとりにあるアパートに暮らしていた。マルタの遡上期間中は毎日、朝な夕なに多摩川へ通っていた。当時の多摩川でマルタウグイを一番釣っていたのはわたしだと思っている。
今でもときどき、マルタウグイの釣りを教えてください、と言われることもある。いったんマルタを愛しちゃった自分は、もうマルタウグイを釣ろうという気になれないんです、と答えている。
誰が言い出したのか、マルタウグイの釣りを〝丸太を伐採する〟と表現するスラングがある。言葉の使い方は自由だけど、自分にはとても言えない。
愛は永遠だから。
多摩川のマルタウグイは、人間が絶滅させたものを、人間が移殖放流で復活させた。(「多摩川のマルタウグイはどこからきたか」) マルタウグイの水産資源としての価値はゼロ(!)だが、地域の風物詩を取り戻した流域住民の喜びは大きい。
冷静に考えれば、あんなにデカい魚が都市河川に毎年うようよ遡ってくるのに、誰も食べるために獲ろうとしない。マルタウグイに関しては日本の魚食伝統と歴史的にまるで関係ないところが特徴的。
食べずとも、眺める、釣る、一緒に暮らしていく喜びがある。
まさに生態系の文化的恵みなのである。
多摩川のマルタウグイの遡上は以前は二ヶ領上河原堰で止まってた。最近は府中あたりでも産卵しているよ、と漁協のおじさんは言う。
多摩川のマルタウグイはどこから来たか。 | フライの雑誌社 https://t.co/mHuyBsAt6i— 堀内正徳 (@jiroasakawa) February 21, 2023
あんなにデカい魚が都市河川に毎年うようよ遡ってくるのに、誰も食べるために獲ろうとしない。マルタウグイに関しては日本の魚食文化と歴史的にまるで関係ないところが特徴的。食べずとも、眺める、釣る、一緒に暮らしていく喜びがある。https://t.co/u4OMnZ0BnR
— 堀内正徳 (@jiroasakawa) February 21, 2023
こないだのつるや釣具店ハンドクラフト展で「〝ボクっこ〟って言葉初めて聞いた。」と言ったら、「なんだ堀内さん、そんなことも知らないのけ!」と秩父の内田さんに言われたのが。守備範囲が。
— 堀内正徳 (@jiroasakawa) February 21, 2023
動画の中で『フライの雑誌』122号が紹介されています。
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