水産庁制作のパンフレット「釣り人、住民、漁協でつくる!いつも魚にあえる川づくり~渓流魚の漁場管理~(イワナやヤマメ・アマゴ)」(令和5年2月)が公開された。渓流域の漁場(実質的には釣り場)で魚を増やし、地域活性化ともつなげるための方策を、総合的に提案する内容。
種苗放流の効果検証は、先行して公開されている水産庁パンフレット、「放流だけに頼らない! 天然・野生の渓流魚(イワナやヤマメ・アマゴ)を増やす漁場管理」(令和3年2月)での内容を受けている。
水産庁制作のパンフレットがウェブ上で公開されるようになったのは、取材によれば2012年以降のこと。関係者に配布して終わりだった以前に比べれば、ウェブで公開されるようになったのは進歩だ。釣り人が前々から求めていた都道府県の内水面漁場調整規則へのリンクもようやく整った。
ただ、10年たっても「水産庁 遊漁の部屋」全体のウェブデザインは岩のように変わらない。情報がどんどん吊り下げられていくだけ。内水面の情報は、ツリーの下の下の方に、海関係へのリンクに紛れて潜んでいる。ここへたどり着くのは一般の人にはまず無理だろう。慣れてるはずの本誌編集部でも戸惑うくらい。漁業法上では海と内水面は同格の扱いのはず。分かりやすくしてほしい。
昨今注目の放流の問題については、水産庁は時代の先行きを見越した研究をずっと前から行い、一般向けのいいパンフも制作してある。でも、PRができていないから、世間様にはほとんど知られていない。
だから今頃になって、こういう雑な報道が出てしまうことになる。
> 魚の稚魚 放流しすぎると魚減らす(NHK)
せっかくの情報はみんなで共有しないともったいない。
あと言っておきたいのは、今回のパンフにもあるように、とくに渓流域の釣り場をよくする方法で、不法な釣り人を見回ったり、啓発看板を立てて地域ぐるみで川を見守る「監視活動」が、昔から必ず挙げられる。漁協・地域住民・釣り人による「相互監視」という言葉もセットで出てくる。
「監視」は必ずしも気持ちのいい釣り場作りには繋がらない。
本当に渓流域の釣り場をよくしたいなら、無駄な公共工事をなくすこと、ダム・堰堤を撤去・スリット化して、本来の礫の移動と生物の往来を妨げないことが、魚類の増殖には、はるかに、はるかに効果的だ。それはとっくに結論が出ている。
末端の人間を監視する提言を行うよりも、もっと根本的な、水産行政にしかできないことがあるはず。
これからの時代は、水産系から土木系へのアプローチ、あるいはその逆、両者の連携、地域経済の視点が、必ず必要になるし、どんどん重要度を増していく。釣りを通して、多くの人が安全で楽しく、暮らしやすい社会の実現へ向かえばいい。
水産庁の新しいパンフレット「釣り人、住民、漁協でつくる!いつも魚にあえる川づくり~渓流魚の漁場管理~(イワナやヤマメ・アマゴ)」の内容を、以下に抜粋して紹介します。
ぜひリンク先で全ページをご覧ください。
釣り人、住民、漁協でつくる!
いつも魚にあえる川づくり
〜渓流魚の漁場管理〜
(イワナやヤマメ・アマゴ)
このままでは山間地域から人も魚もいなくなる?
山間地域の問題点|渓流の問題点|漁協の問題点
地域住民、漁協、釣り人が協力して、「いつも魚にあえる川」をつくり山間地域に笑顔と魚を取り戻そう!
「いつも魚にあえる川」をつくると
釣り人、地域、漁協に正の連鎖が起きる。
誰が、何をすればいい?
漁場管理の4つのポイント
禁漁区、C&R区設置|釣獲日誌|監視活動|環境保全
魚を残して増やすC&R区
放流に頼らず魚を増やす
川の上流域は魚の供給源 しみ出し効果
釣獲日誌は漁場のカルテ
漁場の変化を発見、すぐに対策、効果を実感につながる
漁場での野生魚の貢献がわかる
川の巡回や看板設置で漁場を見守る
魚類の生息環境を改善して川や魚を守る
国交省砂防事務所との連携 治水事業の勉強会
放流が効果を発揮する条件がわかった
適切な放流時の魚のサイズとは
先住魚がいると放流魚は暮らせないか
魚のいなくなった漁場を改善
先住魚がいなく・少なくなった場所に、適切なサイズの魚を放流すれば良好な成長や生き残りが期待できる。
地域に笑顔と魚を取り戻す!
地域おこし協力隊と漁協
地域住民、漁協、釣り人による漁場づくり
C&R区で魚を減らさず、釣り券や飲食店の売り上げを維持・増やすことができました。
「いつも魚にあえる川」づくりで笑顔と魚を取り戻そう!
今からでも遅くはありません。大切な川や魚を守ることで、地域の魅力を再発掘しましょう!
発行 水産庁
水産庁「環境収容力推定手法開発事業」により実施
動画の中で『フライの雑誌』122号が紹介されています。
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