この三、四日、身体の調子が悪い。
頭の奥の芯がじんわりとだるい。にぶい痛みが延髄から降りてきて、脊髄を経て、腰椎で別れて両足のつま先までつづく。下を向くと血流がズキッと走る。うつ伏せになると胸の鼓動がドキドキと激しく打つ。このまま死んでしまうんじゃないかというくらい。横向きになると落ち着く。
あれこれ原因を考えてみたがわからない。熱はない。もともと低い平熱だが、普通の人の平熱くらいだ。熱がないというのが余計になぞ感を引き立たせる。病名がわかればまだ対処のしようもあるのに。病院へ行こうか。病院は嫌いだ。
そろそろ人生の終盤に入っているのは間違いがない。50も半ばになるとだんだん歳を取ってきて、普通にしていても若い頃のようにはいかなくなる。ぐったりと床に倒れて、ひとりで天井を見上げていると、閉じた瞼の中に自分の来し方が映し出される。どうでもよかったな、と思う。
20年前は「多摩川で一番マルタウグイを釣っている男」だった。15年前からは「とにかくオイカワ釣りに行ってる男」になった。だからそれがなんだというのだろう。「フライの雑誌」は63号から数えて64冊作った。ちょうど20年かかった。かかりすぎだ。
単行本もつくった。いろんな人に会えた。楽しかった。世の中に引っかき傷くらいは残せたかもしれない。読者さんへいっときの喜びの時間を届けられたこともあったと思いたい。
行く末を思う。「フライの雑誌」の第128号の原稿は集まってきている。面白い。このまま自分が倒れていると、128冊目の「フライの雑誌」は出ない。それは困る。困るが、どうしようもないことはある。100年先へ残るはずの「シマザキフライズ」は陽の目を浴びない。島崎さんにも、中澤さんにも申し訳が立たない。でもしかし、頭が痛い。体が動かない。結局おれの人生はなんだったんだろう。
というようなことを朝から思いつつ、今日も日が暮れる。
オイカワ釣りへ行く。
復活した。
おかげさまで「フライの雑誌」次号第128号は、8月上旬の発行が決まりました。
…
第126号〈隣人のシマザキフライズ特集〉続き。島崎憲司郎さんのスタジオで2022.12.26撮影。狭いシンクを泳ぐフライ。まるっきり生きてる。これ笑うでしょ。まじやばい。(音量注意) pic.twitter.com/vFuHHPEJvh
— 堀内正徳 (@jiroasakawa) December 27, 2022
フライの雑誌 124号大特集 3、4、5月は春祭り
北海道から沖縄まで、
毎年楽しみな春の釣りと、
その時使うフライ
ずっと春だったらいいのに!