ヤマメ・アマゴ釣りは面白いか
印象に残るヤマメ・アマゴ釣り
- たった一匹の、最初のヤマベ 広瀬靖彦
- やっぱりいた 長谷川久芳
- 家のまえのおまえ 田中典康
- 落葉ヤマメ 備前 貢
- 一〇匹のヤマメ 木住野 勇
- 辛抱たまらない気持ち 野々垣洋一
- 減水ヤマメ 余語 滋
- 丸太のような銀毛ヤマメ 久野 誠
税込価格1,250円
ISBN 9784503133724
INDEX
019 特集◎ヤマメ・アマゴ釣りは面白いか 印象に残るヤマメ・アマゴ釣り 東京のヤマメ釣り場/多摩川復活の日はあるか 堀内正徳/印象に残るヤマメ・アマゴ釣り/たった一匹の、最初のヤマベ 広瀬靖彦/やっぱりいた 長谷川久芳/家のまえのおまえ 田中典康/落葉ヤマメ 備前 貢/一〇匹のヤマメ 木住野 勇/辛抱たまらない気持ち 野々垣洋一/減水ヤマメ 余語 滋/丸太のような銀毛ヤマメ 久野 誠
014 多摩川水族館(27) 多摩川な味 中本 賢
034 どうすれば釣り場にヤマメ・アマゴが増えるか 加藤憲司
040 遊ぶサクラマス 村川堅一
048 モンタナの釣り場管理は日本とこれだけ違う(3) 日本には「アメリカのような」釣り場はできない 石井利明
048 だって、そうでしょ(1) 東京の奥多摩漁協はヤマメ・イワナ・ニジマスの遊魚料を無料にすべきだ 中沢 孝
042 ヌシとの遭遇 備前 貢
050 フロリダで、魚の大きさについて考える 阪東幸成
062 アメリカ人のフライフィッシング文化考(7) 著名人の影響力 西堂達裕
065 スタンダードフライ・タイイング図説(23) 番外編/フローティング・ストリーマー 備前 貢
070 優しき水辺(44) 斉藤幸夫
072 隣人のフライボックス(52)大久保劭さん(埼玉県北葛飾郡)のフライボックス
078 魚の胃の内容物を調べて自分なりのパターンを巻く(1) ユスリカとコカゲロウ 久野 誠
081 大見川の一年(7) モンカゲロウ 森村義博
086 大工のウィリー 渡辺裕一
097 五度目のニュージーランド(1) 渡辺貴哉
090 カブラー斉藤の人生にタックル(8) 三浦半島沖、船釣り釣行記 フライで戻りカツオのはずがイワシでシイラ釣りの巻 カブラー斉藤
123 釣り人はちょっと工夫する(5) 身近にある竹で、丸竹フライロッドをつくる 東 清美
102 オレゴンの日々(10) 収穫としてのハンティング 谷 昌子
104 秘密のヤマメ・ダービー顛末記 碓井昭司
108 コンサートは終わった(5) 赤いランドセル カルロス菅野
110 忍野「釣り堀裏」物語 小島弘義
113 ふらいだ・ばーちゃる劇場(23) マジで~、ビビリングびっくり~のミラクルハッピー、ピ~の巻 毛針田万作
114 マーリン・トラウマ 野々垣洋一
119 トラウト・フォーラム通信 トラウト・フォーラム事務局
120 イワナをもっと増やしたい!(7 イワナの移動生態はほとんど研究されていない(2) 中村智幸
126 九重町・漁場監視員日誌(6) こんにちは、何を釣るんですか? 田中典康
148 読者通信
内容紹介
東京のヤマメ釣り場/多摩川復活の日はあるか
一二〇〇万人がひしめく東京都の西部を横方向に貫くように流れている多摩川。その水は、上流から下流まで全域にわたり古くから人間に利用されつくしてきた。東京都の水源林として最上流部の森林はほぼ手つかずのまま保護されているが、小河内(奥多摩)ダムでせき止められた水は、東京湾に流入するまで随所で堰やダムで分断され、導水パイプや水路で発電所や貯水池へと運ばれていく。小河内ダムより下流の多摩川は、堰やダムで取水された残りの水と支流から流れ込む水で維持されている。人間が放水を止めればすぐに死んでしまう人工の大河だ。
多摩川の渓流魚の生息エリアは基本的には羽村より上流部になる。渓流釣り場として多摩川を見た場合、都心から近く、交通の便のよいことに大きな価値がある。道路は、青梅マラソンで有名な青梅街道が青梅市内から小河内ダムを経て最上流部まで、よく整備されている。JR青梅線が川沿いを縫うようにして走っているので、青梅駅より先のどの駅から降りても、川まで徒歩で簡単にアクセスすることができる。最上流部をのぞき、多摩川は深山幽谷を流れる神秘の川ではない。むしろいつも人間の生活に密着しているコンビニエンス感にあふれた川だ。
本誌の創刊号(一九八七年)に、多摩川の大ヤマメをイブニングライズで釣る記事が掲載されている。多摩川はかつてフライで大ヤマメを狙える釣り場として全国的に脚光を浴びていた。が、その期間は短く、わずか数年後には「多摩川は釣れなくなった」、「多摩川はもうだめだ」といった声が聞こえるようになり、今ではフライフィッシャーマンにとってヤマメ釣り場としての多摩川はすっかり昔話になってしまっている。
ふたたび多摩川がヤマメの好釣り場としてフライフィッシャーマンから注目される日はあるのか。今後どうすれば、東京都民を中心にした多くの釣り人が〈いつでも気軽に渓流釣りを楽しめる多摩川〉になりうるのか。まずは多摩川のヤマメ釣りが「よかった」時代をふりかえりつつ、どのような経緯で現在のような状況に至ったのかを探った。
多摩川水族館(27)多摩川な味 中本 賢
久しぶりに多摩川のアユを食べた。タモだち(タモ網すくいの仲間)が、コロガシ釣りで釣った和泉多摩川のアユだ。
体長二十三センチ――。鮮やかな黄色い斑と背中のオリーブ色が美しくマッチングした、それはそれは立派なアユなのだ。さっそく腹を出して見ると、黄色い卵塊がたわわに詰まっている。魚類図鑑の説明によると、アユの卵はメス一匹のおなかに三万粒も入っているそうで、産卵させずに、こうしてまな板に乗せてしまったのがなんとも勿体ない気にもなる。
ここ数年、多摩川のアユは毎年一匹は食べることにしている。食べ物としてどのくらい通用するのか確かめるためだ。
去年のアユには驚いた。ほんの少しアユの味がしたからだ。それまでは、すでに焼いている時点から食べ物の匂いがしない。鼻の奥にツーンとくる化学臭が立ち上がり、口に入れるとさらに吐き出しそうな「多摩川な味」でいっぱいになる。各地でアユは食べてきたが、こんなすごい臭いがするのは多摩川と名古屋の庄内川のアユしか知らない。したがって、毎年アユの形をした固形洗剤を焼く覚悟で焼いている。
ヌシとの遭遇 備前 貢
早朝四時少し前、目が覚めてストーブをつけ、たばこを吸っていると目覚まし時計が鳴った。
シャワーを浴びて服を着替え、昨夜の残りご飯を温めなおして食べた。
なんだかすごくテキパキしている。昨夜は午前二時ごろ寝たので、二時間くらいしか眠っていないのに、頭のなかも冴えてスッキリしている。今日こそは、いい釣りになりそうな予感。
防寒着とウエーダーの入ったリュックサックを背負い、ロッドケースを抱えて高山駅へ小走りに急ぐ。道路はカチカチに凍っていて、吐く息は真っ白。空気までも凍っているようだ。アルミのロッドケースを持つ手が、たちまちビリビリとかじかんで、何度も持ち替えては片方の手をポケットに突っ込んだ。
もう三月だというのに、飛騨高山の春はまだまだ先のようだ。
それにしても、三年前の二月と三月、何度こんな朝を迎えたことだろう。この年、ぼくと山口君は、まるで仕事のように、毎週何日かは長良川へ通いつめた。
格好良く言えば、大きなプールでライズするシラメの、ユスリカの釣りが面白くてしかたなかったからだ。だけど本音は、あまりにも釣れない日がつづいていたからだ。それで、今日こそは来週こそはと、ほとんど意地になっていた。
フロリダで、魚の大きさについて考える 阪東幸成
釣りの世界に広く浸透している神話の一つに、釣り人の格を語るものがある。洋の東西で若干ニュアンスが異なるが、だいたい次のようなものだ。
人が釣りを始めると決まってたどる道程がある。まずは、数。初めて釣竿を買ったその日から、釣り人の頭はまず魚の数のことで一杯になる。一緒に行った友人と釣った魚の数を比較したがるし、ほかの釣り人と話すときには開口一番、必ず「某日、某所で何尾釣った」と自慢したがる。また、その数は常に三割から四割増しが通例。
釣り人は誰から教えられたわけでもないのに、釣りを始めた途端見事に法螺吹きの衣装を着る。もちろん釣りに行くと、必ず釣った魚の数を数える。そんなのいちいち憶えていられるのか、という常識的な問いには、この時期の釣り人は憶えていられる数を釣るのがやっとなのが実状、と答えておこう(ぼくはこの第一段階を「盲目的数量追求期」と呼ぶ)。しばらくすると、やがて魚のサイズが気になってくる。つまり大きい魚を釣りたくなる。釣った魚を岸に横たえるや、やにわに常に携行しているメジャーをあて、「くそーっ、尺やまめまであと一センチだったのに!」と毒づき、しかし友人への報告は「尺上」としてなされる。もちろん法螺吹きとしての技量は釣技の進歩の速度をはるかに凌ぐ勢いで向上していく。(夢見る尺上計測期)。
釣りに熱中する人間でこの二つの過程を経ない者はまずいない。(「釣り人はなぜ釣るのか」 という大命題に対しての回答も、この本能的とも言える二つの初心に内在しているはずである)。この二つの長く熱い時期を過ぎると、やがて魚品を求めるようになる。魚の品格、つまり数も大きさもどうでもよいが、一匹の美しい野生魚を釣りたいと思う(審美眼的求道期)。
カブラー斉藤の人生にタックル(8)三浦半島沖、船釣り釣行記 フライで戻りカツオのはずがイワシでシイラ釣りの巻 カブラー斉藤
悪いけど今回の話は面白くないぞー(別に今までが面白かったと強弁するつもりはない)。どのくらい面白くないかというと「On the Road 男ふたりの道草旅」くらい面白くない(しかしこれはタイトルからしてすごい。何か中村雅俊を彷彿とさせるものがある)。タイトルといえば「人生にタックル」というのは編集部で考えたらしいが、すごく良くはないがまあまあ悪くない。許せる範囲だ。しかし「何でも作るゾ篇」というのはかんべんして欲しい。私は「やるゾ」というようなやる気のある人間ではない。もっとデローンとした人間である。原題は「何でも作ってみよう」だった。一見ふつうのようだが、ネローンとしたテイストを出したかったのだ。それにカタカナの「ゾ」がいやだ。しかしいくら何でも編集部まで敵にまわしてはいかんな、とやや反省の態度を見せておくとする。
釣り人はちょっと工夫する(5)身近にある竹で、丸竹フライロッドをつくる 東 清美
近頃バンブーロッド愛好者が増えてきたような気がします。ひところに比べるとビルダー(メーカー)が激増し、ロッドの値段に幅ができたためでしょうか? バンブーロッドはゆったりしたアクションと独特の素材感が魅力ですが、有名ビルダーの作品になると、まだまだ高嶺の花です。
ところで、自宅周辺の雑木林わきや野原などでよく見かける篠竹(丸節竹/マルブシチク)を見るたびに、この竹はフライロッドに使えるのではないかと、私は長い間ずっと気になっていました。生えているときの元々のテーパー具合がちょうどよさそうですし、実際に枝を取り去ってそのまま振ってみるだけでもなかなかのアクションなのです。
そして、実際に篠竹を丸のまま使った「丸竹フライロッドづくり」に挑戦してみようと思い立ったわけです。
目標は、私が好きな8フィート6インチ、渓流での使用を考えて#4ライン指定、持ち運びを考慮したツーピース、そして尺クラスの魚の引きに耐えられる丸竹ロッド。
素材は近所の山から調達し、必要な道具はホームセンターなどで購入しました。
フェルールに金属は使わず、はじめはスピゴット・タイプにしてみましたが、継ぎの部分の製作が難しいうえ強度にも問題があるため、バット部先端にティップ部末端がすっぽり被さるスリップオーバー・タイプに変更することにしました。