あらためて、キャッチ・アンド・リリースを考える
日本の(釣り場管理方法としての)キャッチ・アンド・リリースは、どのようにすすめられるべきなのか。
税込価格1,250円
INDEX
001 扉フォト 南米44 浅野眞一郎
009 なぜイエローストーン国立公園は魅力的なのか 芦澤 牧
013 あらためて、キャッチ・アンド・リリースを考える/日本の(釣り場管理方法としての)キャッチ・アンド・リリース キャッチ・アンド・リリースは資源管理の一方法にすぎない 上田真久/なぜ、ニュージーランドではキャッチ・アンド・リリースが行われていないか 斉藤完治 /キャッチ・アンド・リリースは必要だが、キャッチ・アンド・リリース区間は必要ないとの声 坂田潤一/やっていい釣りとイケナイ釣りの基準が見えない 北海道水産部漁業管理課監修 村川堅一/日本ではなぜキャッチ・アンド・リリースが簡単に導入できないのか 木住野 勇
036 1998冬、クロロプレーン・ウエーダー・カタログ 編集部
043 1998活躍したこの一本 パラシュートタイプのハーフスペントフライ 渡辺貴哉/CDCダン 米田賢治/ノーハックル・CDCダン 樋渡忠一/CDCビートル 野々垣洋一/ハードシェル・スペント・アント 備前 貢/ビーズヘッド・オリーブ・マラブー カルロス菅野/スペイ・コックハックル・ストリーマー 余語 滋/蛍光レッドマラブー カブラー斉藤/フラッシャブー・シェニール・マドラー 根津甚八/セミ・フライ 佐藤淑広
056 優しき水辺 36 斉藤幸夫
056 隣人のフライボックス 44 久野 誠
056 スタンダード・フライタイイング図説 新素材「シー・ファイバー」とエンリコ・パグラシ 備前 貢
071 南米通信 3 シートラウト、そしてドラード 浅野眞一郎
078 ブラウンの跳ねるダム湖にて 備前 貢
089 養鱒場、壊滅す 1998年8月26日、集中豪雨災害の現場から 林 総一郎
092 多摩川水族館 19 続々々・銚子川のユラユラ帯 水際のマジリンバ 中本 賢
092 郡上からの手紙 11 御漁場のじい様の巻 谷口宏次
098 オレゴンの日々 3 16年前の思い出 Grassy Lake Creek 谷 昌子
100 恐怖の一夜 平谷美樹
100 つくればわかる、バンブーロッドの価値 竹を三角に削りはじめる前にやるべきこと 山城良介
110 カブ斉藤の道具大好き 1 スーパーカブ釣り旅行のための、快適アイテム カブ斉藤
114 フォト紀行 暖かい風 倉茂 学
114 トラウト・フォーラム通信 トラウト・フォーラムは、釣り人のネットワークです
121 ふらいだ・ばーちゃる劇場 15 「国家資格・乙種フライ釣人認定資格」の巻 伊藤哲男
122 1998秋、二人のイエローストーン 釣りの楽しみとは何か 堀内正徳
129 子どものフライフィッシング 8 マモルの肖像 本村雅宏
134 ミッジ 小島弘義
137 釣り人はちょっと工夫する バージョンアップ型ダンカンループ・ノットと細いティペットの強度を高めるノット 東 清美
138 「釣魚大全」を訳して 霜田俊憲さんに聞く 編集部
150 読者通信
内容紹介
特集-あらためて、キャッチ・アンド・リリースを考える
日本の(釣り場管理方法としての)キャッチ・アンド・リリースは、どのようにすすめられるべきなのか。
ここ二、三年のうちに、フライフィッシャーの地道な活動によって、全国いくつかの釣り場(北海道の渚滑川、山形県の月光川、寒河江川などの一部区間)で、釣り場管理のひとつの方法としての「キャッチ・アンド・リリース導入」が宣言された。
情報収集に時間をかけてピンポイント的な穴場を聞きださないかぎり今の日本の多くの地域では釣りらしい釣りは成立しづらくなってきており、多くの釣り人がどこへ行っても「釣れない、魚がいない」という慢性的な失望感を味わっていることからすれば、この「キャッチ・アンド・リリース導入」は注目すべきことだろう。
そして、このキャッチ・アンド・リリースをめぐる現在の流れは、今後わが国の釣り場のあり方を探るうえでも注目すべきことであることはまちがいない。が、これで日本にもアメリカなみの釣り場ができるかというと、残念ながらそう簡単にいかないのである。これまでのわが国には、アメリカのような「キャッチ・アンド・リリース導入」という苗があたりまえに育つ「土壌」が用意されていないのである。
アメリカには、州政府が魚族の調査研究や釣り場運営マネジメントを行い、釣り人へサービスし、釣り人はボランティアでそれに協力してきているという「土壌」がある。これに対して現在の日本の「キャッチ・アンド・リリース導入」は、荒れ地に過大な期待をかけられたかよわい「苗」が植えられたような状況なのである。
では、ここまできて、ここから先どうなるか、これから先をどうするか…を考えるための話題提供として五人の方々に登場いただいた。(編集部)
1998年冬、クロロプレーン・ウエーダー・カタログ
アングラーズハウス、イナガキ、ケン・インターナショナル、ZAP(Pazdesign)、GMGサービス、ダイワ精工、ティムコ、モンベル、リスコフィールド、Rivalley
スタンダード・フライ・タイイング図説(15)特別編 新素材「シー・ファイバー」とエンリコ・パグラシ
備前 貢
エンリコ・パグラシ。日本ではまったくと言っていいほど知られていない人物ですが、アメリカのソルトウォーター・シーンでは、若き個性派タイヤーとして一部で非常に注目を集めている人物です。
もともとは、ニューヨーク州ロングアイランドのリトル・ネックという小さな街でプロショップを経営し、そこで自身のオリジナル・パターンやマテリアルを開発して販売していました。
しかしその後、タイヤー業に専念するために店をたたみ、同じくニューヨーク州のベスペイジでLPフライ・カンパニーを旗揚げし、現在はそこを拠点に活動しているようです。
アメリカ東部のストライパーやブルー・フィッシュ、コスタリカのビルフッシュなどなど、それらを釣るためにソルトウォーター・フィッシング専門の彼が開発したものはいろいろあります。例えばエポキシ系の接着剤を使ったフライを均一に乾燥させるための低速モーター(エポキシを塗ったフライを数本まとめて回転させることができる)や、なんと一分間で硬化がはじまるエポキシなどなど。その筋のフライタイヤーが唸ってしまうようなものがあります。しかし、何をさておき彼を一躍ソルトウォーター・シーンの新旗手として有名にしたのは「シー・ファイバー」という化学繊維からつくったマテリアルと、それを使った独自のタイイング方法でしょう。
ブラウンの跳ねるダム湖にて 備前 貢
どのくらい眠り込んだのか、ふと気づくと、自分の周囲の光景が一変していた。いつの間にか風はピタリと止まっていた。流されるまま寝ていたので、湖岸に吹き寄せられていたぼくは、同じように流されて来た多量の流木の真っ只中に閉じ込められていたのだ。「クラスター状態やがな…」脱出しようと、ジタバタもがいているうちになんだかワケもなくさびしく切なくなって、「さびしいやんけ、オイ。どないしてくれんねん…」大声でどなってみる。行く手を阻む流木のジュウタンは、まだまだ続いている。物音ひとつなくなった湖面に、動いているのはぼくひとりだけだった。
1998秋、二人のイエローストーン
釣りの楽しみとは何か
木住野 勇 樋渡忠一
日本のフライフィッシャーがいう「イエローストーン」とは、アメリカのイエローストーン国立公園そのものだけではない。広大な国立公園とその周辺エリアをも含めた一帯のことである。そして、そこにはマジソン川、ファイヤーホール川、ヘンリーズフォーク川などをはじめとする数々の著名河川がひしめき合っており、アメリカのフライフィッシャーにとっても憧れの釣り場である。一九九八年の秋、そのイエローストーンに、本誌にもたびたび登場してくれているキシノさんとヒワタリさんのお二人が出かけた。これまで本誌上で、釣り場周辺に生えている植物でフライを巻いて釣ったり、総額二、〇〇〇円のフライフィッシング・タックルを自作して釣ったり、ちょっと変わった遊び方を実践してくれている、あのキシノさんとヒワタリさんである。
これは、初めてイエローストーンへ出かけたお二人の経過報告のようなものである。