「昨日巻いたフライがいちばん釣れる」という法則がある。明日釣りに行こう、フライ巻こう、と前夜に泥縄式で巻いたフライが、けっきょく翌日の現場でもっとも働いた経験は、多くの方がお持ちだろう。
健全なフライフィッシャーなら、日頃からフライタイイングにいそしみ、巨大なフライリザーバーを常に満杯にしておきたいもの。だが現実はちゃちゃっと巻いたフライを数本、フライボックスへ入れて持って行く。準備は事前にしておきましょうね。という学校の先生の訓示を思い出す。
この「昨日巻いたフライがいちばん釣れる」法則には、科学的な根拠がある。
第一に、「昨日巻きのフライ」は、上手に巻ける。追いつめられた精神の高揚が、シャウト効果を発揮させ、釣り人に実力以上のタイイング能力をもたらす。ラーメンマンを驚かせた火事場のくそ力だ。釣り人にとってもっとも大切な野生の本能である。
第二に、「昨日巻きのフライ」は、使われる。わたしたちのフライボックスに入っているのは骨董品か、何年も発酵させた肥やしだとして、そこへ、新しく巻いたフライが入れば、当然目立つ。釣り場に立って最初につまみ出すのは「昨日巻きのフライ」だ。気づかないフライ、使わないフライは無いのと一緒だ。
第三に、「昨日巻きのフライ」は、 …
『フライの雑誌』第111号特集◎隣人のシマザキフライズ 32頁「クロスオーストリッチは裏切らない」より
それなりにフライを巻きためて、家で準備している時にはこれ以上ない完璧な布陣だと思っている。が、川でライズを前にすると貧相も貧相、赤子も同然、丸腰そのもの、いきなり弾切れ、これでどう闘えというのだと頭を抱えてしまう。とても不思議なわたしのフライボックス。
釣り場に出たとたんに視野がキュッと狭くなって、釣れるフライを見つけられなくなる。対応策は今のところ第111号と『水生昆虫アルバム』を、繰り返し読むことくらいかなあ。
ところで、神経を集中してタイイングしてるとき、1分くらい息が止まってることに気づいた。「タイイング時無呼吸症候群」と名づけた。症状としては、クラクラする。
フライの雑誌 124号大特集 3、4、5月は春祭り
北海道から沖縄まで、
毎年楽しみな春の釣りと、
その時使うフライ
ずっと春だったらいいのに!