毎回毎号、締め切りが近づいてくると、何かに追いかけられる夢を見る。飛行機がこっちめがけて堕ちてきたりとか、隕石がバラバラと飛んでくるとか。昨夜はクマに追いかけられる夢を見た。ていうか、釣りをしていたら川越しに遭遇した。
川幅は30メートルくらいあった。同時に気づいて目が合ってお互いに「あっ」となり、弾みで先方が半歩こちらへ踏み出したところで、目が覚めた。クマにしてみれば、わたくしどもの生活圏へ勝手に侵入してきて「あっ」もないでしょう、といったところ。
ましてや、「出た」とか「危険動物」とか「まじやばい」とか言われて、集団で撃ち殺しにくるなんて、あまりにも桃太郎的な展開じゃないですか、とクマに言われそうである。桃太郎のオニは赤毛の渡来人だった説があるけれど。
さてそれはそれとして、グローバルな新自由主義社会に対比させる意味で、相互扶助の精神で成り立つ小さなコミュニティの暮らしが注目されている。人間らしく生きたいナ、というグループだ。自分もそっちがいい。基本、競争とか無理なんで。
で、思い出したのが、『マッドマックス2』である。砂漠の中の砦みたいな石油精製所に暮らしている人々がいた。リーダーのパッパガーロさんを中心に、約30人くらい。核戦争後の砂漠の真ん中で、みんなで力を合わせて石油を精製している。石油は人間らしく生きるためのパスポートなのだそうだ。議論し、理解を深め、助け合いながら、おだやかに暮らしている。
製油所に暮らす人々には、壮年も青年もいれば若い女性も子供もいる。年寄りもいる。身体障害者もいる。それぞれが日々の暮らしの中での、その人ならではの役割を持って生きている。まさに助け合いながらの相互扶助の暮らしだ。
製油所の人々は、たいへん凶暴な荒野の暴走族、ヒューマンガス様たちの一味に襲撃される。製油所ごと石油を寄越せと強要されるが、もちろん一致団結してたたかう。マックスの協力を得て、犠牲を出しながらも大量の石油を隠し持って脱出し、最後は新天地へ移住することができた。その石油どうすんの、という一抹の疑問はある。
そこで思うわけです。自分の場合、どうなんだろうかと。製油所のなかで、なんか役に立つことはあるんだろうか。力弱い。頭弱い。手に職ない。そしてコミュニケーション力弱い。30人くらいの集まりの中でもきらいな相手はいると思うから、うまくやっていける自信がない。どうしよう。けっこう切なくなった。かといって、ヒューマンガス様の仲間には入れてもらえないと思うし。
というような悩みを、最近『マッドマックス:フュリオサ』を一人で観てきた、うちの人に打ち明けた。まず、相互扶助を考えるのにマッドマックスを前提にしなくてもいいんじゃない、と言われた。そうかとは思う。保育士さんになりたい、って言ってたじゃない。保育士さんはどう? と提案された。あ、それいいな。わたし子供は好きだ。
核戦争後の砂漠の真ん中の砦で、保育士さんやりたい。みんなが弓矢と火炎放射器で暴走族とたたかっている間、わたしは全力で子供たちと遊んでいよう。これだって相互扶助だ。あと、一緒にオイカワ釣りもしよう。
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